2015年度 久敬会 「ミニ講演会」第1回のご案内

2015年08月07日(金)更新
第1回 久敬会ミニ講演会
   ★ 会場は  久敬会館 2F 会議室      
   ★ 申し込みは、メール、FAX、または電話で久敬会館へ
 
テーマ: 「報道の重さと怖さ」
日 時: 2015年11月29日(日)14時から16時
講 師: 石高 健次氏(高21回 ジャーナリスト)
 記者になろうと考えたきっかけは、1972年、大学3年の夏に100日ほどかけて欧州、中東、インドなどを回ったことでした。今や死語となってしまった“無銭旅行”です。茨高の3年間が自由で牧歌的だったことも背中を押したのでしょう。無銭といっても、食料代や野宿・ヒッチハイクができない時に備え多少の現金は必要です。ユースホステルでバイトをしたり日本から持ち込んだ土産品を路上で売ったりしました。橋の下や、駅の片隅、ヒッピーたちがたむろする空き家・公園などで寝ました。
 身の安全を確保し安い食品を手に入れるためには、とに角行く先々で人をつかまえてモノを尋ねなければなりません。結果、騙されることもあるし、話し込んで気が合えば、その人の家でごちそうになったり、自分と同じ境遇の旅行者と途中まで一緒したりすることもありました。
 人種、国籍、宗教、職業、“見てくれ”を問わず、様々な人たちと話すことになったのです。結果、すでにわが身に滲みこんでいた多くの偏見や誤解が拭い去られるという、発見の毎日でした。それは、自分を豊かにしてくれましたし多少の度胸もつきました。
 コミュニケーションって大事だし素晴らしいと考え、マスコミの一員である朝日放送に就職したのです。
 1997年、北朝鮮による少女拉致を突き止め、その経緯と家族たちの苦悩を描いたTVドキュメンタリー『空白の家族たち』で新聞協会賞。主な著書に『金正日の拉致指令』(朝日文庫) 『めぐみへの遺言』(幻冬舎文庫)など。現在フリーランスで活動中。
講演要旨
 朝日放送では一貫して報道局に在籍し、定年退職まで100本ほどのドキュメンタリー番組を作りました。主に調査報道というジャンルです。世間が知らない、つまり本にも雑誌にもネットにも出ていない埋もれた事実、それも、理不尽としか思えない出来事を掘り起し、解決を社会に訴えるものが多かったです。
 かつて新潟で学校帰りに行方不明になっていた少女横田めぐみさんが、実は北朝鮮に拉致され平壌で生存していることを、1997年に突き止めました。行方不明から20年間、何の手がかりもなく過ごしていた両親のもとを訪ね、私自身がそのことを告げました。報道する11日前のことです。
 誰も知らない事実を人に告げたり報道したりするのは怖いことです。横田さんについていえば、「生きています」と話したあとで、彼女が性犯罪などに巻き込まれておりどこかから遺体が発見されれば、結果的に私は両親の心を弄んだことになるからです。
 調査報道には、常にそういう葛藤や「どこか見落としはないか、間違っていないか」という不安が付きまとっています。企画し取材を始めたうちの7割くらいはボツでした。
 そうした仕事の裏話も含め「報道と社会」「メディアの役割」についてお話ししたいと思います。
psfuku
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